1.内容証明とは、どのような内容の通知(書面)を
①どのような内容の通知(書面)を
②相手方に
③いつ
④送ったのか
を後日、郵便局により証明することができます。
単なる書面では、相手方が「そのような内容の通知」は知らないと反論すれば、例え、配達証明を付けたとしても、配達記録が残っているその書面が「そのような内容の通知」であることまでを証明してくれるものではないので、内容の真偽が不明となります。
これに対して、内容証明によると、郵便局も「そのような内容の通知」を保管するため、配達された通知が「そのような内容の通知」であることまで証明されるので、相手方は「そのような内容の通知」は知らないと反論することはできません。
ちょっと分かりにくいかもしれませんので、返済期限の過ぎた借金の請求を貸主が借主にした場合で見てみましょう。
2.貸主Aさんが借主Bさんに返済期限や返済日を特に定めずに10万円を貸したとしましょう。
この場合、貸主Aが借主Bに返済を請求したときから返済をしなければなりません(民法412条3項)。
そこで、貸主Aさんが借主Bさんに、手紙で貸した10万円の返済を求めたとすると、借主Bさんは10万円の返済を求めるという手紙(通知)は着ていないと反論すれば、例え、その手紙に配達証明が付いていて、借主Bに配達された(受け取った)としても、配達された手紙が10万円の返済を求める内容であったかまでは証明できないので、返済を請求したとはいえません。
これに対して、10万円の返済を求める通知を内容証明で送ると、借主Bに配達された(受け取った)ので、配達された通知が10万円の返済を求める内容のものであったものではないと反論することができず、請求を受けたとき、つまり、通知が届いた時から返済をしなければならず、その日を過ぎると遅延利息も支払わなければなりません。もっとも、通常はこの通知が届いた時から○○日以内に支払えとなっているので、その日を過ぎて初めて遅延利息が発生することになります。
このように、通知の内容を証明する点で有益であり、①の問題ですね。
3.他に、③が問題となる例としては債権を譲渡した場合やクーリングオフの場合です。
債権者Aが債務者Bに対して、債権をCに譲渡した場合、確定日付のある証書によらなければ、債務者以外の第三者に対抗することができません(民法467条2項)。この確定日付ある証書は内容証明も該当するため、一般的には内容証明で行われています。
クーリングオフの場合は契約日から8日以内に行わなければならないという制約があるときが多く、内容証明を出す際は日付が記載されるために8日以内の判定がなされます。
4.では、内容証明を出せば、それで問題が解決するのでしょうか。
残念ながら、功を奏する場合とそうでない場合があります。
内容証明を出した方が良い場合とそうでない場合、言い換えると、メリットとデメリットを見ていきましょう。
5.メリットについて
既にみてきたように、通知の内容を証明できる点、配達の事実及び作成日、配達日が証明できる点です。
そのため、債権譲渡の通知(承諾含む)、クーリングオフだけではなく、契約の解除、時効の中断、期限の利益の喪失等を行う場合は有用とされています。
また、後に裁判になった場合は通知を出したという証拠にもなりえるため、訴訟を提起することを念頭に置いている場合も有用といえます。
のみならず、心理的なプレッシャーを与えることになるため、訴訟を念頭に置いていても相手方がこちらの請求に応じることで、訴訟を回避できるときもあります。
その他にも、相手方に心理的なプレッシャーを与えることから、相手方に何らかの回答を求める場合にも有用なときがあります。
6.デメリットについて
心理的なプレッシャーを与えることになるので、相手方との友好関係ないし人間関係が崩れることがあります。このような関係を維持したいのであれば、内容証明を出さずに話し合いで解決するしかないかもしれません。
また、訴訟を提起することを望んでいない場合(裁判をする覚悟がない場合)も内容証明を出すべきではありません。相手方が必ずしも裁判を望むとは限りませんが、相手方次第では、裁判で白黒をつけようと反論して、意に反し裁判になる可能性があるからです。
さらに、相手方が訴訟提起される危険を察知して、資産隠しが行われる可能性もあるため、相手方の資産状況が悪いようであれば、内容証明を出すのを控えた方がベターでしょう。
無論、相手方が無資力の場合は、残念ながら、実効性がないので、徒労に終わることになります。
7.行政書士に依頼するメリット。
行政書士はいうまでもなく法的問題について交渉ができません(弁護士法第32条)。
したがって、内容証明の中身が法的問題の交渉に及んでいれば弁護士法違反となります。
そのため、解除や追認といった単独行為、催告といった意思の通知、債権譲渡の承諾といった観念の通知を行うのであれば、行政書士に依頼するメリットがあります。
また、交渉ではなく、相手方から回答をもらいたいときのメリットがあります。
上記とも関係しますが、費用という点においては、行政書士に依頼する方が、一般的には低額になりがちなので、メリットがあります。
これは、通知内容が比較的容易だからです。
8.行政書士に依頼するデメリット
まず、内容証明を交渉の手段として用いる場合は弁護士に依頼するべきでしょう。
また、裁判まで考えているのでしたら、弁護士に依頼する方が良いでしょう。行政書士に内容証明を依頼して出した後に裁判となると弁護士に最初から事情を説明したうえで、どのような内容証明を出したかを見てもらい、対応することになるので、迅速性を欠き、非合理的な面があります。
もちろん、内容証明を出した行政書士から弁護士を紹介されれば、この点の迅速性を欠くことのデメリットはリカバーできることもあるでしょう。
9.行政書士に内容証明を依頼するときの注意点
行政書士といえども、誰でも内容証明が得意ではありません。
事実確認、法律構成、文章力が要求されているので、これらはある程度法律の勉強をしていないと身につきません。だからこそ、弁護士への依頼が多いのです。
法律の勉強を長年された行政書士に依頼するべきです。
また、もしあなたが裁判も辞さない考えであるなら、後々のことを考えて、弁護士を紹介してくれる行政書士に依頼すべきです。
そのことを意識して、インターネットやホームページで行政書士を探してください。