建設業押印の見直しについて(その2)

建設業の申請・届出書類について、押印が不要になったことで、楽になった、便利になったと思われる建設業者や行政書士も多いです。

確かに、建設業の新規(許可換え新規・般特新規含む)業種追加・更新申請において、押印する様式はありません。行政書士に委任するときは委任状だけ押印することになります。

その点では、確かに、楽になった、便利になったと言えます。

しかしながら、建設業の許可申請には、省令様式6号というものを提出しなければなりません。これは誓約書と呼ばれるもので、役員等が欠格要件に該当しない者であることを誓約しているものであります。

この様式6号の誓約書を提出することで、役員が欠格要件に該当すれば、問答無用に、別の言い方をすると弁解の機会もなく、建設業の許可が取消されるのです。

私も仕事柄、大阪府のHPに掲示されている建設業処分業者一覧を毎月1回は見ています。見てみると取締役が傷害事件(刑法204条)や暴行事件(刑法208条)等を起こして罰金刑を受けたために許可が取消されている業者はそれなりに存在しています。

押印をせずに、この誓約書を出すということに伴う法的効果を申請者はどれだけ意識しているのでしょうか。

また、省令様式7号別紙同7号の2別紙1及び同別紙2省令様式12号では、経営業務の管理責任者や取締役、常勤役員等を直接補佐する者に賞罰の記載を求めた上で、相違がない旨の記名が求められています。

もし、相違があれば虚偽申請になりかねません。

もっとも、現実に7号別紙や12号調書に関して虚偽申請を行ったとして許可が取消されたという話を私は聞いたことがありませんが(欠格要件に該当しているにもかかわらず、申請をしたことにより虚偽申請として許可取消しというのはあります)。

ただ、この点についてこれらの者がどれだけ意識しているのか。

もちろん、押印が必要だった時からこのことに関してどれだけ意識していたかは怪しい面もあります。

新規のクライアントに対しては書類の説明をきちんとしている行政書士は多いでしょう。ただ、そうではなく、決算変更届や更新などで何回も手続きをしているクライアントに対しては、その度に書類の説明をせずに、なあなあで押印を貰っていたのも事実でしょう。

今後は押印が不要になったことで、後でそんな話は聞いていないと言い逃れをする者も出てきて、行政書士が巻き込まれる可能性も増えるのではないでしょうか。

このように考えると、私たち行政書士は押印を貰わないことで、よりこれらの書類についての説明責任が、職業倫理的に重く課されることになったのではないでしょうか。

行政書士は自己防衛として、申請者との間で欠格要件や虚偽申請に関する覚書や誓約書を作る必要性が高まったといえます(以前からこのような覚書の必要性を行政書士会は謳っていましたし、実際に作っている行政書士も知っていますが)。

その意味では、私たち行政書士にとって楽になった便利になったと言い切れるのか、私には少し疑問に思ったりします。

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